きっと、ずっと、会議は踊る

エンジニアリングとアイドルとロックンロール

職業プログラマの僕の残業が減らないたった1つの理由

0. はじめに

お久しぶりです、しゅうです。今年も気ままに更新します(といってる間に2月に・・・)。前回のエントリ人工知能ポエムとシンギュラリティについてのエッセイで、ライブ告知をしなかったら「ライブ告知なかった」というありがたいコメントを世界のI先生に頂いたので、今日はライブ告知から入ります。

僕とカツくんとで細々やってる「しゅうかつ」という安直な名前のフォークデュオで、名古屋のライブカフェで歌います。

2人で音源作りもしました(が誰も聞いてくれないので一応晒しておく)。

カツくんはギターと歌とフィドルバイオリン)、そしてコーラスを担当します。相変わらず彼はとても上手です。

ということで、今日は僕の残業が減らない愚痴を書きます。ただし、僕の残業時間は、比喩的じゃない意味で致命的じゃない*1し、法的にも全く問題ない範囲であることを先に断っておきます。

1. 僕は今日も早く帰れない理由

1.1 知的労働なブルーカラー

 僕はインターネットの会社でプログラムを書くことで給料をもらっていて、みんな大好きドラッカー氏が言うところの知的労働者(Knowledge worker)だ。一方でプログラマ

仕事のスケールやコストが土木などと同様の人月計算による日数と必要人数の掛け算という単純な数式によって算出される (ブルーカラー - Wikipedia

 という意味で完全なるブルーカラーだが、同時に『人月の神話』で有名なフレデリック・ブルックス

この本は「ソフトウェア工学バイブル」と呼ばれている。なぜなら、誰もがこの本を読んでいるが、誰もこの本で述べていることを実践しないからである。

 と言っている程度にはこの分野の人月計算(簡単に言うと見積もり)は機能していない*2。だから、「予定通りに仕事が進まないから残業する」と言ってしまえばそうなんだけど、あまりにも元も子もないからもう少し掘り下げて考えてみる。

1.2 知的労働者の残業が減らない理由

よく考えたら僕の知り合いにはエンジニア以外の会社勤めも結構いて、その人達はソフトウェア開発をしてるわけでもないし、人月計算も(多分)されていないホワイトカラーだ。でも、知的労働者である点と、「結構遅くまで残って仕事をしている日もある」という点は共通だ。となると「人月計算がうまくいかない」というのは、(ここでは比喩的な意味で)致命的な問題ではない気がしてくる。ここでは、もう少し話を広げて"知的労働者"が残業してしまう理由について考えてみたい。

1.1.1 知的労働とその評価について

僕の見ている限り、職種にかかわらず以下の3点は共通している。

  1. 作業開始・終了のオーバーヘッドを考えると「時間ぴったりで帰る」ことは現実的でない
  2. 業務の引き継ぎや作業分担は、タスクの難易度によらず相当のコストがかかる
  3. 目標設定・タスクの要件定義時にアウトプットの質を定義されることは稀である が、アウトプットの質は社内外問わず常に評価の対象になる

短期的に見れば、「今日もうちょっとやってから帰ろう」は非常に理にかなった判断だ。

1.1.2 知的労働における残業の理由

冷静に考えたら、残業は2パターンしか思い当たらない。

  1. 進捗が思わしくない場合、残業してスタックしたタスクを消化する
  2. 進捗に余裕がある場合、残業してアウトプットの質の向上を測る

なるほど、たしかに進捗具合に関わらず残業する(評価の対象になるという意味で)真っ当な理由が存在する。

2. 今日も残業する僕のジレンマ

せっかくだから、会社とか国とか"組織的"に知的労働者の残業時間を減らそうとするとどうなるかについても妄想してみよう*3

1.2.2で述べたように、知的労働において「アウトプットの質の向上」を始めると無限に残業できる状態に陥ってしまうので、とりあえずこれを避ける必要がある。そうすると「タスクに求める質を事前に要件化し、求められる質に対する充足具合と完了速度でアウトプットを評価する」みたいな、偉い人はみんな大好き"生産性で評価"メソッドが適用されることになるはずだが、これはつまり「組織全体のアウトプットの質を下げる代償として残業を減らすこと」を意味する*4。アウトプットの質の低下はそのまま顧客満足度を下げることに等しいので、当然ながら組織的に相当のリスクを負うことになる・・・というか少なくとも僕の働くインターネットの業界だと(比喩的でない意味で)致命的だ。残業はしたくないけど、会社が潰れる(というか給料がもらえなくなる)のはもっと困る。

 そしてもう1つ、「アウトプットの質の向上」の作業というのは、辛く悲しい会社勤めの知的労働者の数少ない楽しみというか、個々の裁量とか仕事への拘りが宿る唯一の部分だといってよいと思う(少なくとも僕にとってはそうだ)。これを組織的に許さなくなってしまうと、これまた偉い人がみんな大好き"イノベーション"が起こることを阻害する要因になる気がしてならないし、とりあえず今以上に労働がつまらないものになるのは間違いない。

あ、理由が2つに…まぁ、でも、とりあえず僕はいつだって早く帰りたい。

3. さいごに

なんか思ってた以上に組織的に残業減らす施策は大変そうで、でもそんなことは関係なく僕は自分だけは毎日早く帰りたい。だから、今日も、天気が良すぎて気が滅入る。

とりあえず、名古屋近郊にいる人、2/12の夜は今池で飲みましょう*5。今日は当然ながらこの曲で。初期 the Beatlesのアイドル感はすごい。

www.youtube.com

注釈等

*1:よくわからないけど、勤務時間だけが(ここでも比喩的じゃない意味で)仕事を理由に死にたくなるだとは思わない。残業してなくても死にたくなることも結構ある気がする。少なくとも僕はそうだ。それにしたってこのtogetterは、見るたびに絶望的な気分になる。

togetter.com

*2:こう言うと怒られそうだけど、この本分厚い上に読みにくくて僕自身はパラパラ流し読みした程度で挫折した。流石バイブル。

*3:個人的には「繁忙期は100時間、月平均60時間を上限」と言うのは、上限としては現実的でよいラインなんじゃないかと思う。日常的に異常が発生するシステムのアラートは、最終的に誰もキャッチしなくなる。

headlines.yahoo.co.jp

*4:例えば、こち亀が最終的に「毎週安定してまあまあのクオリティ」な漫画に落ち着いたのは、秋本治さんが定時稼働の有限会社"アトリエびーだま"を作ったためだと僕は信じて疑わない

*5:しつこくもう一回